『雪の日』(現代版:兼続×三成)
冬の土曜のある朝、兼続が目を覚ましたときにすでに隣にいたはずの三成がいなかった。いつもなら時間の許す限りベッドのなかでごろごろと温もりを満喫しているはずなのに何事だろうかと兼続が起き上がると、三成はパジャマに冬用のガウンを羽織ったまま窓の傍に立ち、外を凝視していた。
「見ろ、兼続」
背後に感じた気配に振り向き、三成は窓の外へと兼続の視線を促した。
「だいぶ積もってきたぞ」
都心にある駅近の高層マンションから見渡せる東京の町は、三成の言葉どおり一面の白銀世界になっている。遠くに見える電車の速度も、こころなしか遅いようだ。週末は大雪になるという予報を信じて、金曜日の夜早めに移動してきて正解だったと、改めて兼続は思った。
「まだまだ止む気配もなさそうだ」
次から次へと落ちてくる雪に満足するかのように、窓の外を舞う粉雪を見上げている三成は、どことなく、いや、明らかに嬉しそうだ。
生まれも育ちも今の住まいも新潟県内である兼続にとって、真冬の大雪はさして珍しくない。それよりも、数年ごとにしか降らないとはいえ雪を子どものような目で眺めている三成の姿のほうが珍しく、つい、釘付けになってしまう
「まあ、止んでくれないと困るのだがな」
そうして兼続の視線の意味に気付き、とっさに大人ならではの態度を装う姿も、このうえなく愛おしい。
「そうだな」
冷えた肩に手を置き、兼続は三成の柔らかなくせ髪に唇を埋めて囁く。
「三成が窓から離れてくれないからな」
小さなからかいに、三成は馬鹿にしたなと口を尖らせる。
そんな姿も可愛くて、兼続は冷え始めた細い肩をいつにも増して優しく深く抱き寄せた。
2014.2.8
---
お読みくださりありがとうございました!
都内に雪が降ったので、急にいちゃいちゃしてる兼続と三成が書きたくなり突発的に書いてしまいました。
現代な上に短い話ですみません。