『床語り』(兼続×三成)
暗い閨に灯る炎の小ささは、夜更けがたいぶ過ぎたということを表している。
生暖かい床の中で二人、既に寝息を立てていてもおかしくない刻なのにまだ起きているのは、明日兼続が越後に戻ってしまうから。
「次に会うのは年が明けてからだな、三成」
まだ秋も終わってないというのに、離れていなければいけない時間はなんと長いのだろう。たくさん文を書くよと兼続は言ってくれるけれど、紙も墨も今この瞬間のように温かく自分を包み込んではくれない。
兼続の胸枕から身を起こして見上げる唇にそっと口を寄せれば、望みのとおり舌の動きに応えてくれる。
「三成」
顔を離し、瞳に映る互いを見合う。
「愛しているよ」
微笑む眼差しが照れくさくて、三成は目を伏せる。
「恥ずかしい奴め」
拗ねたように呟くと、強い力でぐいと頭を引き寄せられた。
「本当だから仕方あるまい」
ふふ、と笑って兼続は、また力を込めて抱き締めてくれる。
ずっと俺の傍に居てくれと言ってしまえたら。こんなとき、三成はいつもそう思う。けれどその言葉が意味することとその答えを知っているから、胸の内に仕舞ったまま、深い想いを強がりが隠った呆れの溜息に変えてみせる。
そうして、それを知ってか知らずか涼しい顔をしながら、兼続は甘く穏やかに引き寄せた唇を吸って優しく頭を撫でるのだ。
「また空が白みそうだな」
長い口付けの合間に囁かれた言葉を肯定するつもりで、三成は上になった兼続の体に腕を回す。
次に影が重なり合うときまで、この温もりを肌に焼き付けていられるように。
2006.12.10
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お読みくださりありがとうございました。
戦国無双2、エンパイヤーズの知音イベントが嬉しくて書いたものです。
再掲にあたり少し直そうかとおもったのですがそのままにしました。