『安寧』(大橋黒木)




シャワーを浴びに行くと告げて起き上がりかけた矢先、黒木は隣でうつ伏せている大橋に腕を掴まれた。

「戻ってきたら起こしてください」

口調ははっきりしているものの、黒木の目に映った無駄に大きい枕に埋まる顔の瞼は早くも完全に閉じている。相当、疲れているらしい。

「いいけど、すぐ出てくるぞ」

刑事という職業柄、年中悩まされている寝不足と疲労を解消するには短すぎる仮眠時間に懸念を示すも大橋は、それで構いませんと言う。

「絶対に起こしてくださいよ」

のろのろと半身を起こし、大橋は瞼の重さに抗いながら黒木の鎖骨と首筋に口付けを落とした。

肩に頭を預け、甘えるように寄りかかる。

「二人でいられる時間を、1秒でも無駄にしたくないんです」


しばらく、黒木は黙って大橋の体を支えていた。

やがて、寄りかかられた肩口から大橋の、うたた寝とはほど遠い深い寝息が聞こえてきた。


たくさんの気持ちを込めた息をつき、起こさないようにゆっくりと、眠りに落ちた体をベッドの上に横えてやる。

閉じた瞼と軽く開いた口許に、黒木は優しく唇を寄せた。



2014.7.31

# 2014.8.1 修正


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お読みくださりありがとうございました。

竹の塚署の大橋は普段わりと強気だけれど、黒木の前ではちょっと甘えてたらいいな、という妄想です。

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