『言い訳』(現代版:左近兼続)




かつて三成と、浮気について話をしたことがある。

綿密な意見交換をしたわけではなく恋人同士の雑談にすぎなかったが、そのとき三成はこう言った。「ホテルよりも映画館に行かれるほうが許せない」と。

いわく、性欲目的であれば許容できるが、心を繋ごうとされるのには耐えられないそうだ。


「三成さんらしい意見ですな」

新潟駅近くのビジネスホテル、通常の部屋よりひとつだけランクが上の和洋室のベッドに腰掛けて、兼続の話にワイシャツのままの左近が笑う。

「それで、兼続さんとしては」

仕事の汗を流そうと踏み出した歩を止めて振り返ると、いつも以上に愉快そうな目線を浮かべている左近と目が合った。

「これは浮気ではない、と?」

穏やかな問いかけ口調は責めるでもなく茶化すでもない。

それでもその魂胆を察した兼続は、あえて何も言わずに脱衣所へ消えて行くことにした。



浴室から水音が聞こえてくるまでの間が常よりやや長いように感じたが、気のせいの範疇と言えなくもない。

目を細め、左近もまた大きく延びをしてからゆっくりとネクタイを外した。



2012.4.22


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左近兼続で現代版。

スタンスは戦国版とまったく同じです。

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